『文章読本』
与謝野晶子と谷崎潤一郎がそれぞれ翻訳した『源氏物語』についての感想めいたことが書かれていたのは、この本ではなかったかなと思って本棚から探して読んでみたのだが、これではなかった。三島由紀夫の何かの本に書いてあったような気がするのだが。。。
『文章読本』というタイトルの本は何人もの作家が書いている。何年か前にいろいろな作家の『文章読本』を読みあさったことがある。それは文章が少しでもうまくなればなあ、という気持ちがあったのは事実だが、それ以上に、引用されている極上の文章のエッセンスだけを集中して読めるという楽しみの方が大きかった。
この三島の『文章読本』では始めに日本語の分析をしている。平安朝には漢字が男文字、かなが女文字とされたが、漢字は外来のものであり、かなは日本独自のものである。つまり、論理、理知の特質をすべて外来の思想によったものであり、日本語の根本的なところにはこのような抽象概念が欠如し、日本語で書かれる抽象概念には常に情緒の霧が付きまとうのはこうしたところにある、という説を展開している。だから、日本語で書く作家は、日本語の持つこういう長い歴史から逃れることはできず、その特質を常に注視していなければならないとする。
後半の「文章技巧」では、「人物描写」「自然描写」「心理描写」「行動描写」などに分けて、さまざまな作家の文章を引用する。引用されるのは海外の作家の翻訳文が案外多い。一見、保守的に見える三島の文章だが、日本語以外の言語での表現をかなり研究し、自分の文章に溶け込ませようとしていたのかもしれない。
ついでに軍記物が多いのも三島らしい。
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