知人が旅行に行っている間、ハムスターを預かることになった。日曜日にわが家にやってきて、今度の土曜日に帰ることになっている。
ちょっと親父顔なハムスターである。
好奇心旺盛で初めての家なのに、ケースから出してやるとさっそく部屋の中の探検を始めた。狭いところが大好きなようでやたらと机の下に入りたがる。この部屋は仕事部屋でもあるため、机の下にはパソコンが数台と客先から預かっている機器が置いてある。なので、あまりそこには行って欲しくない。だいいち、そこは埃だらけだからハムスターの体にもよくない。

段ボールと大きな辞書を並べて部屋を半分に仕切って、机やパソコンのある方に行けないようにしてみた。しかし、その仕切りの向こうにパラダイスがあることを知ってしまっているハムスターはどうしても行きたがる。壁を必死によじ登ろうとし、登れないとわかると今度はすき間を探して体をねじって入り込もうとしている。そのうち、ここからは入れないだろうと思っていたすき間に体を入れ、向こう側のパラダイスに行ってしまった。満足そうに向こうの隅で毛繕いをしているが、こちらは気が気ではない。

人間がこっちのすき間を埋めると、今度はまさかこんなところからというすき間を見つけて入り込んでしまう。そんな攻防を繰り返し、ようやくどこにも出られるすき間がないとわかると、今度は床に座り込んでいる人間に登ってくる。手から肩まで登り、満足するとまた降りてくる。
座っている人間のほぼ垂直に立つ胴体をTシャツにしがみつきながら登ってきたこともあった。チャレンジャーな登山家ハムスターは何度かの失敗を繰り返しながら、ようやく登頂に成功し、満足げに肩にのって辺りを見渡していた。登っているときに、人間がそっとお尻を支えていたことは気がつかなかっただろうが。
好物はバナナチップ。どんなすき間に入り込んでいても、バナナチップの袋を開けてその匂いを送ってやると必ず顔を出す。ただ、すき間探しに興奮しているときは、顔だけは出すがそのまま戻ってしまうこともしばしばだ。ヒマワリの種も喜んで食べる。ヒマワリの種はその場で食べずにほお袋に入れて、部屋の隅っこで後ろ向きになって食べている。中の柔らかいところだけを食べ、外側の堅いところはその場に捨てていくので、ケースの外で食べた場合はどこで食べたかを把握してゴミ掃除を人間がする必要がある。ニンジンもまた好物だ。シャキシャキと涼しげな音をたてて食べる。皿に入れて与えると、その場で食べているのだが、朝になると必ず自分の寝床に移動されている。ニンジンと添い寝してるのだ。
このハムスターを元気なままで持ち主に返すのが当面の最大の使命となっている。

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