奈良へ(29):鬼の○○
そろそろ帰りの時間が気になる。今日中に帰らないといけないのだ。
自転車を漕ぎ、飛鳥駅に向かう。途中、自動車の通行量の多い道を避けて細い道に入る。偶然にもそこに前から見たいと思っていたものがあった。
鬼の俎(まないた)、鬼の雪隠(せっちん)だ。
雪隠とはトイレのこと。

この石は両方とももとはひとつの古墳を構成する石だった。
俎が下部、雪隠が蓋石。いまは道を挟んで上側に俎があり、斜め下に雪隠がある。地震か何かの折に蓋石の雪隠がはずれて斜面を滑り落ちて今の場所に落ち着いたらしい。
写真では見たことがあったが、実際はこういう位置関係になっていたというのは始めて知った。何事も実物を見なければわからないものだ。

もとは古墳の石だということがわからなくなった後の時代に、想像力豊かな人がこんな話を作った。
むかしむかし、このあたりに鬼が住んでいてのう、この鬼が悪いやつでの。
道を行く人があるとわざと霧を降らせ、迷ったところを捕まえてのう、この石のまないたで切り刻んでなべに入れて食ってしまったのじゃ。腹が満ちたら出すものを出さんといけないじゃろ。ほら、そっちの石じゃよ。そこの雪隠で用を足したのじゃ
こんな話をして子供らを怖がらせては喜んでいた老人がいたかもしれない。
再び自転車に乗り、飛鳥駅前のレンタサイクルショップに返却した。
ちょうど午後4時だった。京都発6時の新幹線には間に合いそうだ。
(『奈良へ』おしまい)
| 固定リンク | コメント (2) | トラックバック (0)




































































最近のコメント